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「それは気にしないで。美術室の片付け結構かかっちゃったからそんなに待ってないよ。それより東雲くん、大丈夫?」
「ああ、うん。手当てしてもらって楽になったよ。もうほとんど痛くない」
「そっか。それなら良かったー」
胸をなでおろす光井さん。
本当に心配してくれていたみたいだ。
東雲くんにもそれが伝わっているのか、申し訳なさそうにしている。
「…じゃあ、これからどうする?まだもう少し時間はあるけれど」
「あ、俺は本当にもう大丈夫。若葉さんたちが良ければ校内案内続けよう」
「わかった!じゃあ、光井さん。美術部の見学してもいいかな?」
「もちろん!大歓迎だよ」
それからわたしは下校時間まで校内を案内してもらった。
お陰でこの学校についていろいろ覚えることができた。
光井さんに案内してもらった美術部は、ほとんど部員が来ていなくて、かなり自由に見学することが出来た。
話によれば締め切りの直前以外はいつもこんなガラガラな感じらしい。
光井さんは綺麗な海を描いた油絵を制作中で、ちょっとだけ見せてもらった。
それはとてもすごくて、入部してもわたしにこんな絵がかけるとはとても思えなかったけれど。
それでも、嬉しそうに案内してくれた光井さんを見ていると、部活をするなら美術部がいいな…と思うようになっていた。
美術部の窓からはテニスコートが見えて、その上の空が赤く色を変えるころ。
わたしたちは案内をやめ、下校することにした。
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