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「伊予だよ。伊予 知尋。今日から登校だって!」
「イヨチヒロ……?」
って誰だっけ。どこかで聞いたような。
「忘れた?前に話したじゃん。ほら、先生殴って停学の」
「あ、あーー……!」
そうだった。転校初日に教えてもらったんだ。
柳さん曰く、東雲くんと並んでヤバイ男子。
おそらくこのクラスで避けられている生徒のツートップというところだろうか。
「……ごめん、思い出した。その伊予くんが今日から学校来るんだね」
「そういうこと。若葉さん気をつけてね!」
「う、うん…」
まあ、確かに先生に暴力振るうような人だもんな。用心するに越したことはないか。
東雲くんのこともあるし、人を一方的な評価や噂で判断するのは抵抗があるけれど。
停学までなっている以上、残念だけど人を殴ったことは事実だもんな。
うん。君子危うきに近寄らず。気をつけよう。
(……ん?)
ふと、一緒に登校してきた光井さんの方を見る。柳さんが来た途端、光井さんは急に黙り込んでしまった。
こころなしかさっきより顔色が悪い。下唇を少し噛んで、なにかを我慢しているように見えた。
「…光井さん、大丈夫?」
「えっ」
「なんだかつらそうだから。もしかして、具合悪い?」
「そ、そんなこと……大丈夫だよ。ありがとう」
光井さんが笑う。でもやっぱり無理をしているように見えた。
「しんどかったら言ってね」
そう言うと、光井さんは笑みを深くしてうなずいた。
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