新たな【出会】

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伊予くんは周りに目をやることもなく、自分の席につく。 東雲くんの2つ前の席。 あわわわわ… わたしからもまあまあ近い。斜め前だ。 伊予くんの後ろ姿がよく見える。その想像よりも細い肩を見ているうち、なんだか緊張してきた。 わたしは周りに気づかれないよう、こっそり東雲くんに身体をよせる。 「し、東雲くん…、伊予くんってどんな感じ?」 「どんなって…うーん…運動神経がいいよ。元テニス部で、テニスが上手い」 「いや。そういうのじゃなくて…」 素行とかそういうのを聞きたいんだけど。 まあ、東雲くんってあんまり人のネガティブなところ言わない感じだもんな。 ちょっと聞く人を間違えたかもしれない。 何気なく伊予くんの後ろ姿を眺めていると、彼は突然ピクッと動き、前の扉へと目をやった。 すると数秒してからその扉が開き、担任の先生が入ってきた。 ん? なんだ、今…… 「おはようございます。出席をとります」 担任は教卓につくと出席簿を開く。 「伊予くん」 まず真っ先に伊予くんの名前を呼んだ。 たったそれだけのことで教室にピリッと緊張が走る。 「はい」 緊張した空気を感じてないわけないのに。 伊予くんは何でもないように平然と返事をした。 「伊予くん、今日からまたよろしくね。それと……」 担任も伊予くん同様、教室の雰囲気を気にしていないようだった。 わたしの方に顔を向け、すっとこちらに手を伸ばした。 「二学期から転入生がきました。若葉さんです。 ……またお互い挨拶しておいてね」 (ひい!!) 先生! わたしのことは良いから、こっちに振らないで!!
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