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「そ、それって伊予くんのこと?」
小声で聞くと、東雲くんはハッキリうなずいた。
「そのことはまたあとで…」
東雲くんが最後のシャーペンを拾ってくれて、床に散らばったものはすべて片付く。
これ以上ひそひそ話していてもおかしいだろう。
わたしは席につき、前を向いた。
ちらりと盗み見たとき、伊予くんはもうこちらを向いてはいなかった。
◆◇◇◆
さて、クラス中がどうなるかハラハラしていた伊予くんだが、特に大きな問題は起こしていなかった。
授業にも普通に参加しているし、先生に反抗的な態度を取っているわけじゃない。
まして誰かに暴力を振るったりもしていなかった。
でも休み時間。
伊予くんはいつも教室を出ていき、授業が始まるギリギリまで戻らない。
そしてクラスのみんなはヒソヒソ噂する。
どこかで悪い仲間と集まっているんじゃないかとか、かくれて良くないことをしているんじゃないかとか。
(うーん……)
でもわたしは違うことが気になっていた。
伊予くんの目の色。金色の目。
東雲くんが魔術を使うときも、目は金色に光っていた。
ということは、伊予くんも魔術を使えるってこと?
でもあのとき、特に変わったことはなかったよね。魔術なんて使っているようには見えなかった。
ああ…
東雲くんは何か知っているのかな。
早く話を聞いてみたい。
わたしは机に手を入れ、ノートに触れた。
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