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◇◆◇
待ちに待った放課後。
柳さんたちとの下校を断り、わたしは席に座る東雲くんに声をかけた。
「東雲くん、いい…かな?」
「うん、もちろん。ここで話す?」
「うーん……、できたらもう少し人が少ないほうが」
教室にはまだまだクラスメイトがたくさん残っている。
東雲くんはあまり気にしないみたいだが、わたしはまだ少し魔術の話をしているところを他の人に見られたくない気持ちがある。
いくらかは吹っ切れたと思うけど、やっぱり完全には割り切れない。
我ながら情けないとは思うけど。
東雲くんは『わかった』と言い、カバンを持って席をたった。
「じゃあ、4階に行こう。一つ空き教室があるんだ」
話によると、今の3年生は他の学年より生徒数が少なく、クラス数も一つ少ないそうだ。
なので教室が一つ空いているらしい。
「それに4階では吹奏楽部が練習しているから、ちょっとくらい物音をたててもバレないよ。だからよく使っているんだ」
「なるほど」
きっと魔術の練習に使っているんだな。
先生たちもまさか生徒が教室で魔術の練習しているなんて思わないよね。
わたしは教室を出る前、中に残っているクラスメイトを確認した。
柳さんたちはもう帰ったし、光井さんは部活に行っている。
伊予くんは……いない。
どこに行ったかは、きっと誰も知らないだろう。
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