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東雲くんはパタンと魔術書を閉じた。
「突然変異みたいなものかな。でもプリマ・マテリアが多いだけなら特になにもない。
昨日の例えになるけど、ねるねるねーるねはお皿とスプーンがなければ完成しないだろう。
魔術は方法がわからなくては発動しない。……基本的には、ね」
『基本的には』つまり、例外があるってことだよね?
尋ねると、東雲くんは深くうなずいた。
「まれなことなんだけど、日常生活の中で無意識のうちに魔術変換しちゃう人もいるんだ。正規の魔術と違う方法で魔術を作っちゃう人。
ねるねるねーるねを……スプーンも皿もないから、手のひらで受け止めて指で混ぜましたーみたいなやつ」
「……おお」
それはちょっと……不味そう。
「彼らはもちろん魔術なんて知らないから、魔術士のような本格的なことはできない。日常の中のちょっと不思議…くらい。
昔、スプーン曲げっていうのが大ブームになったらしいけど、あれはもしかしたらそう言う人が始めたのかもしれないね」
左手の指をピンとたて、それをクイッと曲げて見せる東雲くん。
たぶんスプーンに見立てているのだろう。
「あとよく聞くのが……なんとなく人の考えていることがわかるとか、裏返したカードの柄を当てられるとか……そういう手品のようなささやかな力として現れることがほとんどなんだ」
もちろんよくテレビで見るやつは、本当に手品の場合が多いけどね、とつけたした。
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