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「そっか……」
東雲くんは魔術士。
わたしはもうそのことはほとんど疑っていない。
でも魔術ってわたしが想像したものとちょっと違っていた。
もっともっと万能なものだと思っていたけど、意外に不完全なものだし、魔術士も完璧な存在じゃない。
でも、ただ夢見ていたときよりも、わたしは魔術を好きになっている気がした。
「…まあ、伊予くんのことはあまり気にしなくていいんじゃないかな。大抵の場合、力は本人が気づかないうちに消えたりするし」
「そうなの?」
「ああ。手のひらでねるねるねーるねを作ることに、無意識のうちに嫌気がさしてやらなくなるんだ。もし消えなかったとしても、そもそも大した力じゃないだろうから大丈夫だよ」
「ふうん」
東雲くんがそういうならきっと大丈夫なのだろう。
わたしも誰彼構わず魔術の話をするつもりはないし、伊予くんについてはこれ以上気にしなくてもいいか。
「……ただ不思議なのは」
一人ごとのように、東雲くんがつぶやく。
「伊予くん、本当に一学期は力を持ってるなんて全然気づかなかったんだよなあ。今日ほどハッキリ目に反応が出ていたのなら、俺でもわかりそうなんだけどなあ…。
どうして一学期は気づかなかったんだろう」
「……?」
「まあ、とりあえず今はいいか。
……それで、若葉さん。話はもうこれで終わり?」
「あ!う、ううん!実は……」
ドキン!と胸が緊張で縮む。
わたしはカバンからノートを取り出した。
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