6人が本棚に入れています
本棚に追加
「……若葉さん」
「…は、はは。本当に何かごめん…恥ずかしい」
「どうして?なにも恥ずかしいことないよ。
俺は嬉しい。……ありがとう」
東雲くんはノートを大切そうに胸に抱えた。
「これ大切にするよ。このノートの魔法陣や呪文をためすときは、一緒に見てくれるかな」
「あ、でも、本当そんな使えるものはないと思うよ?」
「そんなことはないよ」
ハッキリと。東雲くんにしては強い口調で否定した。
「魔術を使うとき大切なのは『信じる』ことなんだ」
「信じる?」
「そう。自分はできるって、この魔術道具は自分にあっているって、……自分は大丈夫だって」
そこまで言うと、東雲くんは少しだけうつむいた。
「…俺はそれが苦手で…。昔から魔術が上手くできないから、どうしても信じることが出来なくて、失敗して、ますます自分が信じられなくなる。その繰り返し」
「……東雲くん」
「でもさ、昨日、若葉さんが言ってくれたから…俺を信じるって。
だから俺は、そんな若葉さんなら信じられる。若葉さんが考えた魔術なんだろう。それで俺のために持って来てくれたんだろう」
「うん……」
「それなら信じるよ。きっと俺の力になる。ありがとう、若葉さん」
「わ、私こそ……ありがとう…!」
わたしたちは微笑み合う。
胸の中を何か温かいものが満たしていくのを感じた。
最初のコメントを投稿しよう!