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「伊予さ、お前どういうつもりだよ?」
あわあわするわたしをよそに、伊予くんたちはガンガン揉め始めている。
主に二人が伊予くんを責めている感じだ。
「何が?」
「とぼけんなよ、伊予。先輩にオレらのことチクっただろ」
「チクってねーよ。聞かれたから答えただけだよ、…ありのままをな」
「は?余計なことすんなよ!お前はもうテニス部辞めたんだろ。俺らに関わんなよ」
「……好きでやめたんじゃねえよ。おまけ達がハメたんだろ」
テニス部、
…つまりこの二人は部員なのだろうか。
そういえば東雲くんが、伊予くんは元テニス部だと言っていた。
元ってことは、もうやめてしまったということで。
そのときに色々揉めたのだろうか。
伊予くんは抱えていた通学カバンを持ち直すと、二人を押しのけるようにして歩き出す。
「あ、おい、待てよ!伊予!」
「うるせえ。もうお前達と話すことなんてねえよ」
「なんだと?」
「テニス部に関わるなって?別にもうあんな部活、どうでもいい。お前たちこそ一度もオレに勝てなかったくせして、なにテニス部代表みたいな顔してんの?だっせ」
クス、と伊予くんが笑う。
それは嘲笑と呼ぶのがピッタリな、冷たい笑顔だった。
伊予くんはそのまま二人に背を向け立ち去ろうとする。
するとそのうちの一人が『てめえ!』と言いながら伊予くんの背後から掴みかかろうとした。
「あ、あぶな…」
思わず声がもれる。
次の瞬間。
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