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そのまま振り向くことなく去っていく伊予くん。
……と、思ったが急に立ち止まった。
「……いつまで見てんだよ」
「!?」
伊予くんはゆっくり振り返った。
隠れていたわたしとバッチリ目が合う。
…うそ。
気づかれていた。
あの状況で、わたしの方に気付いたの…?
「アンタ、転校生だよな。…確か…」
「…若葉、…花です」
「若葉さん、趣味は盗み見?いい趣味だねー」
「………ごめんなさい」
確かに伊予くんにすれば、いい気はしないだろう。
わたしは素直に謝った。
「冗談。ちょっと嫌味言い過ぎた。……な、若葉さん。頼んでいい?」
「な、なに…」
「このこと、教師にチクらないでくれる?」
「え……」
このこと……喧嘩のこと?
「返事は?」
「で、でも……」
「返事は、はい、だろ」
「……はい」
もともと先生に言いつける気はなかった。事情を知らないわたしがどこまで踏み込んでいいなわからなかったからだ。
わたしがうなずいたのを見て、伊予くんは笑った。
「……うん、アンタは言わなそう。
ありがと、ね。若葉さん」
また、その目が金色に光っていた。
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