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「絢音…大丈夫か?」
「…………」
とある寒い冬の日。
タチの悪い風邪を引いた絢音を看病していた藤次は、そっと…盆に乗せた土鍋を開ける。
「お粥さん作ってきたで?食べて薬飲も?」
「…………」
いらないのか、首を横に振り、苦しそうに息をする絢音に、藤次はさらに続ける。
「ほんなら、水分だけでも摂り。脱水なるで?ホラ、スポーツ飲料。飲めるか?」
身体を起こしてやり、スポーツ飲料の口を絢音の唇に充ててみたが、飲む力もないのか、ぐったりと自分に寄りかかる絢音に、藤次はグッと、何かを決意したかのようにスポーツ飲料を一気に呷ると、口移しで彼女にそれを飲ませる。
ゴクリと嚥下したので、再び飲んで口移ししてやると、絢音が息も絶え絶えに口を開く。
「……こんな事してたら、藤次さんに風邪、うつっちゃう。」
その言葉に、藤次はクスリと笑って、絢音の背中を摩りながら、身を寄せ額を合わせる。
「お前を守って倒れるなら、本望や。せやから早よ、元気になってな?」
「藤次さん…」
そうしてまたキスをして、絢音は3日後には回復したが、彼女が心配していたように、今度は藤次が風邪に倒れ、恥じらう絢音に口移しを要求したのでした。
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