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 ジャージに着替えて、スクールバッグに給餌用になったノートをしまって外に出た。こんなに軽い荷物で通学路を行くなんて数えるていどしかなかった、これが置き勉という状態なのかと気づく。  今日はもう学校へ戻る気はない。電車に乗って最寄りの図書館へと向かった。まばらな乗客のなかでいろはは外の景色を眺めるともなく眺めている。  辿り着いた図書館の自習スペースでスマホを睨みながら、勉強用ではないノートにペンを走らせた。  もう日が落ちていた。帰りが遅すぎる。部屋でひとり、ヴォンは自分の行動は間違っていなかったかと自問する。あんな美味に舌鼓を打てたのだから間違ってなどありえない。  いろはが自分を捨てるのもありえないし、食事の提供をやめるのも考えられない。  だってあいつは――  部屋のドアが開く。ただいま、といろはが帰宅する。おかえり、と応じた。  ヴォンは、ほら、なにも変わったようすはないじゃないか、と自身の見立ての正しさを確信しながら安心して惰眠を貪りはじめた。  いろははいつも帰りの遅い母のために料理を用意しているが今日はスーパーの惣菜を用意するにとどめた。  どうしても気分じゃなかったのだ。  自戒を込めて自分のぶんは買い置きのカップ麺で済ませる。セールのときに買っていた、どことも知らぬメーカーのそれは塩味が舌に刺さり、どうしてもおいしいと思えない。  最初に食べたときよりもなお、口に合わない。  買い置き直後に母とそろって味見がてら食べたときは、失敗しちゃったねと言う母と笑い合う余裕があったが、いまは違う。  おいしくなくても同じものを食べる誰かがいるなら、それでまだ満たされていたのだろう。
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