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 ヴォンを迎えて初めての休日は雨だった。曾祖母の見舞いに行ってきて、時刻はすでに夕暮れに差しかかろうとしていた。もう眠っているばかりの曾祖母にかける言葉は見つからず、ただ手を握りながら元気だったころのことを思い返すばかりだった。  友人との付き合いがあったころはまだ、どこに行っただとかなにを食べただとか話しかけはできたのに。  いまや学校はただ時間を消化していくための場所でしかなかった。  今日は曾祖母との思い出のひとつをヴォンに振る舞おうと思った。  いつだったか、曾祖母の用意した惣菜のひとつが出来合い物で、消費期限が切れていたことがあった。たまたまゴミ箱のラベルが目に入ったいろははお腹を壊したらどうするのかと怒ったが、昔には消費期限なんてなかったとの一点張りで、喧嘩になってしまった。  まだ幼い時分のいろははすぐにそんな喧嘩を忘れてしまって、また曾祖母の用意した食事に手をつけるようになったのだが、いまさらながらあんなに憤ることはなかったと反省した。  直近で、食べられないことのつらさを目の当たりにしたせいもあるだろう。  その短い文章をヴォンは食すと、尻尾の先端の三角形を左右に振りながら考えごとを始めた。 「どう?」  訊ねるいろはにヴォンは、 「ん」  生返事を寄越した。
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