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「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
ぎこちない笑みを浮かべて夫は玄関の扉を閉めた。
あれから、いきなりは変われないものの、夫は少しずつ私と向き合うようになった。自室にこもる頻度も減り、今までは全く関心を持たなかった家事にも、自発的に動くようになってきた。
スマホがピコンと通知を知らせる。『解約手続き完了のお知らせ』と表示された。
先日手続きされました、メッセージサービスについて解約手続きが完了致しました。ご利用ありがとうございました。
メッセージサービス唯
【解約内容】
送信者名:アレックス
契約メッセージ1:時刻18:00→「おかえり。今日もお仕事お疲れ様」
契約メッセージ2:「あなただけよ」→「離れていても、君を想っているよ」
契約メッセージ3:「嬉しいわ」→「愛しているよ」
ズラッと並ぶ契約メッセージの数。上限二十までしっかり設定していた。
三か月前、偶然サイトで見つけたのだった。自分が決めた言葉を送信すると、設定したメッセージが送信されてくるというサービス。
うさんくさいと思いながらも、口コミの良さと興味本位で契約してみた。
月額一万円というのも、万が一騙されたとしても諦めがつくと思った。
実際にはきちんとメッセージが送られてきて、自分で設定しておきながらアイコンが男性のイラストだったこともあり、本当にやり取りをしているような気分になってしまった。思いがけず、そのメッセージに喜んでしまう事もあった。
名前をアレックスにしたのは友梨が想像したロマンス詐欺と思わせるため。ちょうど流れてきたニュースが耳に入ってきて、そう思わせてみたいと思った。
夫がその時、どうするのか知りたかった。呆れて離婚するのか、やり直そうと思うのか。
その結果、離婚する覚悟もあった。確かに私の生活力では厳しいけれど、このまま家族として同居しながら孤独を抱える方が辛かったから。
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