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「どういうことだ?」
「ないものは、ないのよ」
嘘はついていない。だって買ったものなんてないんだから。
「ママ……変なのに引っかかってるんじゃないの?」
「友梨、あなた部屋に戻ったんじゃなかったの?」
これまた珍しい。友梨までリビングにいるなんて。
廊下で立ち聞きでもしていたのか。ため息をつきながら椅子に腰かける。
私の正面に夫。夫の隣に友梨。
二人の表情からすれば、尋問でも受けているかのような気分になる。
「ママ、しばらく前からスマホいじるようになったよね」
「スマホぐらい、触るでしょう? あなたたちだってよく触っているじゃない」
「でも、ママはそんなに触ってなかったじゃない。友達とのやり取りも頻繁じゃなかったし、ゲームをやったり動画を見たりもしないし」
随分な言い草だ。私だってそれなりに友人とのやり取りしたりするわ。確かにゲームや動画見たりはしないけど。
「そんなママがしばらく前からおかしいんだよね。スマホ見ながらニヤニヤしちゃってさ……正直、浮気とかしてるのかと疑ったくらい」
「失礼ね。浮気なんてするわけないじゃない」
「じゃあスマホ見せてよ。普通に友達とやり取りしてるくらいで、あんなににやけたりしないから」
「嫌よ。友梨だって家族にスマホなんて見せたくないでしょ? なんで私が見せなくちゃいけないの?」
「見せるんだ。契約しているのは俺だ」
……出た。何かということを聞かせようとするときには『養っている』発言するんだから。
そして悔しいけどその通りだから、これを言われると逆らえないのよね。
私は軽く息を吐きだして、スマホをテーブル中央へと差し出した。
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