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私の質問に、二人が言葉を詰まらせた。
即座に答えられないことこそ、答えを言っているようなものだ。
「……正直、一番に君だと言い切れない部分がある」
「あら、素直ね」
「三か月で百五十万だ。これがもっと続いていたかもと思えばゾッとする……だが」
夫は言葉を切り、私のスマホを手に取り画面に視線を移した。そこにはさっき友梨がたどり着いた、彼とのメッセージが表示されている。
「わからない。君は『会話を楽しんだだけ』と言った。なぜそんな事を? たったそれだけで、そんな大金をどうして……」
「たったそれだけ、ね。その『それだけ』が大事だって、あなたは思わないの?」
夫が手にしていた私のスマホを、返してくれるよう手で促す。手元に戻ってきたスマホにうつるメッセージ。
〈おかえり。今日もお仕事お疲れ様〉
「おはよう。行ってきます。おかえり。お疲れ様。ご飯美味しかったよ。ありがとう……たったそれだけの言葉を、あなた達は私にくれたの?」
毎日毎日、こっちが『おはよう』と言っても、頷くか、『あぁ』と返してきて、食事を終えて食器をシンクに運んでくれはしても『ご馳走様』も言ってくれない。
「少しずつ、少しずつ、積み重なっていった虚しさと孤独感が、あなた達にわかるの? その寂しさを埋めてくれるものを求めた気持ちが、あなた達にわかるの?」
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