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風の冷たい日だった。田んぼにもぐらの死体を見つけた。もぐらは日光を浴びると死ぬというのは本当だろうか。そんなことを考えながら昔のことを思い出す。
その日は寝つきの悪い夜だった。灯りを消しているにも関わらず、ベッドから眺める蛍光灯の形がはっきりわかる。窓から差し込む月光すらも眩しかった。きゅっと瞼を下ろしながら、明日が来るのを待っていた。
「生まれ変わるならもぐらになりたい」
暗闇の中、耳元で恋人の声がする。彼女は悲しそうに囁いていた。僕はどうして?と聞き返す。
「かわいいじゃん」
そうだね。
「薄暗いところって落ち着かない?」
わかるよ。
「それでひっそりと死にたいの」
そっか。
でもきっとそれって――
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