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「いいなぁ。お菓子作りなんて楽しそう」 「そんな呑気なモノじゃないし。ちゃんとした化学反応の勉強だし。いい?そもそも重曹は炭酸水素ナトリウムって物質で、熱を加えることで分解されて……」 まるで先生みたいに饒舌な(みなと)くんが可愛くみえる。きっと事務仕事が落ちついて嬉しいんだろうな。 「それより、美空(みそら)も部活に行けば?」 「そうだね!よし、まだネームもなにも決まってないけどちょっと描いてくるっ!カルメ焼き、あとで1個ちょうだいね」 「なんでだよ」 言いながらも声が弾んだ(みなと)くんに背を向けて、私はスキップで理科室を後にした。意識はもう原稿用紙の上だ。 そうだなぁ。次は恋愛ものにしようかな。主人公は美術部で奮闘する高校生の女の子!それで相手の男の子は……。 私はふと立ち止まって階段ホールから理科室を振り返った。灯りの漏れた部屋からは楽しそうな(みなと)くんの笑い声が聞こえてくる。 そうだ。 相手の男の子は。 理系の幼馴染ってことにしようっ!
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