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「聞いてよ湊くん!月刊ビスケットの公募規定読んだらシェリーと原稿用紙のサイズが違ったんだよ!もう、一から書き直しじゃんっ!」
「公募先変えるんなら仕方ないんじゃないの?」
「提案したの湊くんでしょっ」
理科室で私が頬を膨らませると、湊くんのため息が漏れる。
「僕はあくまでも科学的に分析しただけ。結果がでないなら前提に問題があるかもって言っただけ」
単調に言った湊くんだけど。でもその表情は柔らかくて明らかに機嫌がいい。きっと久々に白衣姿だからだ。実験テーブルには紙束じゃなくてアルコールランプが並んでいる。
「さっきから何してるの?」
「もう新入生の仮入部期間でしょ?うちはカルメ焼き体験から始めるんだよ」
「カルメ焼き?」
「砂糖を煮詰めて重曹で膨らますやつ。ほら、縁日とかでよく売ってるお菓子」
「ああそれで。今日はみんな忙しそうだね」
隣の実験テーブルでもやはり白衣姿の部員さん達が、砂糖やら温度計を準備している。その中にいた雪ちゃんが私に気づいて手を振ってくれたので、私も笑顔で振りかえす。
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