誘惑

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誘惑

「フフゥン、どうやらだったみたいねェ」  病院長のマリアが呆れたように笑って応えた。 「え、?」  思わず一同はオウム返しをした。 「そうよ。お腹が張っていたのはただの便秘。それからツワリもよ」 「ううゥッらしいわ」  アンジェラもバツが悪いのか、うつむき加減だ。 『そうか。取り敢えず、それは良かったな。アンジェラ!』  首領のベガも満面の笑みを浮かべ大喜びだ。 「ハッハハッ、なァんだ。そうか」  ジャスティンも少しホッとした様子だ。 「なによ。ジャスティン。助かったって顔をして」  アンジェラはキツい言い方をして責めた。 「いやァ別に、そういうことじゃないよ」  正義の味方もアンジェラには手を焼いているみたいだ。 「フフゥン、ジャスティン」  セクシーな女医のマリアは正義の味方に寄り添って微笑んだ。 「はァ……?」  正義の味方は苦笑いを浮かべた。 「次はあなたをジックリ精密検査してあげましょうか?」  マリアは妖しくジャスティンの頬を撫でた。 「いやいや、ちょっとそれは……」  さすがにイケメンの正義の味方も女医の(あや)しい誘惑にタジタジだ。 「フフッ、可愛らしいわね。お姉さんが教えて上げてよ。手取り足取りねえェ……」  ベタベタと身体じゅうを撫で回した。 「やめてよ。お母さん。ジャスティンは私だけのモノなんだから」  すぐに娘のアンジェラが割って入った。 「良いじゃない。減るものじゃないし。お母さんにも少しくらい貸してくれても」 「ダメよ。ダメダメェッ」  娘のアンジェラと母親のマリアは両側からジャスティンの腕を引っ張った。 「おいおい、ちょっと痛いよ」  ジャスティンも困惑ぎみだ。だが満更でもないのか、顔はニヤけていた。  こうして、ジャスティンを巡り母娘の闘いが幕を切ったのであった。  めでたしめでたし(どこが、(笑))  
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