出来ちゃったのよ

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出来ちゃったのよ

「実はね。出来ちゃったのよ」  アンジェラは渋々、耳打ちをして告白した。 「なッ、なにィ出来ちゃった?」  しかしジャスティンは驚きのあまり素っ頓狂な声で叫んだ。 「えェ……?」その声に通行人が反応した。  一瞬にして、通行人(みんな)の注目の(まと)だ。 「もォ、バカね。声が大きいわよ」  すぐにアンジェラはジャスティンの口を両手で抑えた。 「うッうゥ、ぐぐゥ……」  ジャスティンは目を丸くして呻いた。 「……」  周りの人たちが怪訝な眼差しを向けた。だが通行人らはさして気にしていないようだ。  都会なので他人には無関心みたいだ。二人の横を素通りしていった。 「もォッ、おとなしくしてよ。恥ずかしいから」  ようやくアンジェラは力を抜き手を離した。 「あ、ああァ」  どうにかこうにかジャスティンも落ち着きを取り戻しうなずいた。 「ねえェッ、信じられないでしょ?」  アンジェラも頭を抱え途方に暮れた感じだ。 「いやいや、そりゃァオレだって信じられないよ。こう言っちゃァ逃げていると思われるけど、アンジェラとはしてないじゃん」  ジャスティンはあ然とした顔で反論した。 「なによ。悪の秘密結社ギルディアの娘はキスしかしなくても子どもが出来ちゃうタイプなのよ」 「いやいや、どんなタイプだよ。そんなタイプあるのかァ」  ジャスティスも呆れた顔だ。 「だって、しょうがないじゃん。私、ジャスティンが初めてなんだから」  彼女は恥ずかしそうにうつむき、身ごもったお腹を両手で抱えた。元々、スレンダーなので目立たないが、わずかにお腹が膨らんでいるようだ。 「そりゃァ、オレも子どもが出来たのは嬉しいんだけど……」  ジャスティンも照れ笑いを浮かべた。 「ねえェ、どうしよう。こんな事が父親(ジジィ)に知られたら」 「ううゥンッ、そうだな。アンジェラのお義父さんは悪の秘密結社ギルディアの首領だからな。おまけにアンジェラを目の中に入れても痛くないほど溺愛しているし」  ただでさえ正義の味方のジャスティンと悪の首領ベガとは顔を合わせばケンカばかりしていた。いわば犬猿の仲なのだ。  そのうえ愛娘のアンジェラが懐妊したと伝えたら、一大事と言えるだろう。 「どうしよう。もちろんジジィは反対するに違いないけど」  アンジェラは思い悩んでいるみたいだ。 「うッううゥン、そうだなァ」  さすがにジャスティンも頭を抱えた。  悪の秘密結社(ギルディア)の怪人よりも遥かに難敵と言って良いだろう。 『グワッハハッハハ……』  そこへ不意に不気味な笑い声が響いてきた。
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