VS白魔導士①

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VS白魔導士①

オトメルから脱出して、女神の妹、ウミルと会い、オクトーをぶっ倒して、なんとか新しいエリアに辿りつけた。 その港町では、オトメルのように揉めごとに巻きこまれず。 長い船旅をしたので休養と、戦闘地帯に踏みだす前の準備をするため、しばし滞在することに。 「いやあ、よかったよかった」「一生、オトメルに足どめされるかと思った」と勇者一行は和気あいあいとしながらも、俺だけは心中穏やかではなく。 オトメルの女装王様の忠告が忘れられずにいたからで。 港町に到着した夜、ちょうどチャンスに恵まれたので、早速、調べることにした。 勇者は町長が催す歓迎会にお呼ばれ。 格闘家は畑を荒らす魔物を追いはらう手伝いに。 白魔導師は家家を回って病人の看護に。 俺は体調が優れず、宿屋でお休み。 と見せかけて、白魔導師を尾行。 もちろん、女王の忠告に基づいてだ。 曰く「白魔導師は夜に家を回るとき一時間ほど、姿を消すことがある」らしい。 神官や神父、修道士など連れがいても、かまわず。 重症の患者を診ている最中でも、席を外すのだとか。 連れや患者とその家族は、首をかしげながらも「仲間になにかったのだろう」「勇者に急用があるのだろう」とさして気にせず。 そう、たまになら、不測の事態が起こったものと考えられるから、不思議なことではない。 が、女装王様お抱えの間者の報告によると「毎度毎度、決まった時間に、その場を放れるようです」と。 その理由に女装王様は心当たりがあるようだったが「自分の目でたしかめてみたほうがいい」と詳しくは教えてはくれなかった。 深刻そうに告げられて、いい予感がしなかったものの、聞いたからにはスルーして旅をつづけられまい。 ただでさえ、パーティー内では浮気が横行して、関係がこんがらがっているのだ。 これ以上、時限爆弾になるような不安要素を抱えたくなく、早めに白魔導士の疑いについて見定めておきたいところ。 前の酒場の事件での、含みある白魔導師の態度も、ずっと引っかかっていたし。 喉に刺さった小骨のような、その謎が明かされるのを望みながらも、仲間を疑うことに気後れしながらも、注意深く白魔導師の尾行をつづけた。 家々を訪問すること自体は変哲がなく、号泣する相手に感謝されるのを見たりすると「俺、なにやってんのかなあ」と嫌気がさしたものだが、女装王様の云ったとおり。 入ったばかりの家から「すみません、すぐにもどってきますから」と慌てて跳びでてきた白魔導師。 申し訳なさそうな物言いをしつつ、頬を上気させ、目を爛々とさせているような。 走って向かったのは、近くの森。 真っ暗なのにかまわず、明かりもなしに、どんどん奥へと。 見つかるから、俺も明かりを持てず、なるべく放れないよう、足音を頼りに追跡。 途中で見失ったものの、探しまわるうちに淡い明かりが目につき、ぼそぼそと声も聞こえて。 近くの木に身を潜め、そのあたりを覗きながら、聞き耳を立てると。 「長く、交信ができなくて申し訳ありません。 狭い船のうえでは、人目につかず、交信することができませんでしたから。 ええ、ええ、まったく勇者は、忌々しくも、見事にやってくれましてね。 女神の妹、ウミルは深海に身を潜めていたのが、勇者の呼びかけによって地上にもどり、またオトメルと絆を結ぶことに。 これまた、ひきこもりをやめたオトメルの女王が曲者でしたから。 あなたさまの息がかかった城の臣下を一蹴して、勇者を逃したほどです。 これからも勇者の肩を持ち、支援をするかもしれません」 俺はてっきり、勇者以外の男と浮気をしていると思ったのだが・・・。 清純に見せかけて、行く先先の村や町で男遊びをしている、隠れビッチだと。 が、今の内容からして、的外れもいいところ、俺の頭はお花畑だったらしい。 「え、いや、そんなまさか・・・!」とパニック! 俺一人で対処しきれることでないし、そもそも一回の盗み聞きだけで、どうこう判断はできなかったから、ここは一旦、撤退を。 淡い光を放つ球体に、白魔導師が話しかけているのを見ながら、一歩、一歩、じりじりと後退。 「よし、気づいていないな」と前に向きなおり、走りだそうとした。 そのとき。 一瞬にして、全身になにかが巻きつき、地面にどさり。 顔だけを覗かせ、体を覆っているのは、絹糸をつむぐ繭のようなもの。 心身のダメージが重い人を、治癒効果のある繭に包むという回復魔法の一つだったはず。 そう、ということは・・・・。
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