門司智一の章1 

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門司智一の章1 

 門司智一(もじ ともかず)は、あるサイトを観ていた。  そこには、Eさんが教えるサルでも創れる爆弾☆というコーナーがあったのだ。  ふざけた見出しの割には内容が濃く、身近な材料でいかに殺傷能力が高い爆発物が作成可能か、どのように配置すれば最大の力を発揮させることが可能か等、実戦向きの内容が事細かく掲載されていた。  高校を中退してからというもの暇を持てあましていたが、元々理系科目、特に物理学への自信があったことも手伝い、その意外性に富んだ設計図の羅列に見入った。小一時間程して全ての知識を頭に叩きこむと、財布を片手に外へ飛び出していく。荒んだ引き篭もり生活を続けていたが、久し振りの外出となった。  作業終了には五日かかった。  身近な物で、といっても材料採取にはかなり手間がかかり苦労したが、製造自体は一日で済んだ。完成させたブツを横に久方ぶりに例のサイトにアクセスしてみると、新しいメッセージが付け加えられていた。 「先日公開したE式簡易炸裂弾を無事作成させた諸君らに告ぐ。是非とも当方管理人宛てへメールで御一報を。現在我々は才能溢れる人材を云々」  後半部分は読みもしなかった。  一仕事を終えた興奮で誰でもよいから自慢したかっただけなのかもしれないが、とにかく送信してしまったのだ。  完成済み、と。  全てはここから始まった。    数ヵ月後、新聞に謎の大爆発を起こした都庁ビル!テロリストの仕業か?!という記事が掲載される。ここ最近立て続けに発生している犯罪声明のない連続爆破事件である。動機は?この行為にいかなる意味が?全ては未だ闇の中。 そんな記事だった。
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