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嘘か誠の鏡
僕は、殺人鬼だ。
僕は、鏡が怖い。
僕の中の、どす黒くて汚いなにかがさらけ出されるみたいで。
鏡に映った僕は、何もかも、服も、肌も、肉も、何もかもはぎとられて、中にある、ドロドロした真っ黒な何にかになってしまう。
恨み、憎しみ、憎悪、・・・。いろんな感情に蓋をして長年放置し、煮詰まった真っ黒な何か。
このままほおっておけば手始めに軽く復讐にでも行ってしまいそうな。
この真っ黒が、何かをしでかすその前に。
僕は、鏡に映った、その、真っ黒な何かを、鏡の前からきれいさっぱりに消し去ってあげた。
鏡の棚に入った雑巾を、洗濯用洗剤で濡らして、鏡に映った僕を、上から下にきゅっ、きゅっ、と、消していく。
まるで、興味ない、要らない動画を下へ下へスクロールしていくかのように。
僕は、不純物である、鏡に映るあなたを、この世界から消してさしあげたのさ。
だって、このほうがきっと、あなたのためになるでしょう?
ほら、不純物は、浄化浄化。
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