人差し指があればじゅうぶん

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 この町を出てゆきたい。  私の願いにママは言った。  それなら私を消してゆきなさい、と。    消し方なら、知ってる。  子どもの頃からママが私に教えてくれた、基本の魔法だったから。  杖なんかいらない。人差し指で十分。くる、くる、くると指を回す。そして、指の先にあるものが消える姿を想像する。できるだけ具体的に。  どう消えるか。  いつ消えるか。  消えたあとはどうなるか。  そうすると、目の前のいちごは簡単に消えた。 「わ、すごい」 「やったね、カナ」  うまくいくと、必ずママは喜んでくれた。 「もう少し頑張れば、お皿ごと消すこともできるよ」 「でもいちご、食べたかった」 「そしたら次は、元に戻す魔法を覚えなくちゃね」  カナ、やったね。  私がほしいもの、やりたいこと。ママは全部与えてくれた。だってママは何でも持っていたから。
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