0人が本棚に入れています
本棚に追加
「僕はさ、アンブレラ戦争みたいな馬鹿気たことをやって、地球を破滅させて自滅しちゃうような人間たちよりも、牛たちのほうが余程かしこいと思う。だからいっそのこと、人間が絶滅しちゃえばいいんじゃないかな。きみたちは、きみたちだけでも生きていけるだろ? 人間がいなくなったらきみたちは、この島にある草を自由に食べて、自然交配して出産をして、だれにも殺されたり、食べられたり、乳を搾取されることもなく、自分たちの命を全うできる」
僕は話しながら、人間がいなくなり、牛だけが暮らすこの島の風景を思い浮かべた。無理な人工授精や過剰な搾乳で牝牛が体力を削られることもない。屠殺小屋が使われることもない。誰も他の命を搾取しない島。人類がのさばっていた過去の地球には存在し得なかった幸福な孤島に、この島はなる。
「幸福な孤島」僕は声に出す。マザー・モウが、黒い耳をぴくりとさせた。「人間がいなくなれば、ここは幸福な孤島になる」
「僕かメイのどちらかが明日の夜までに死ねば、人類は滅亡に向かうんだけどな。いっそのこと、そうなったらいいのに」
これが、昨日の夕刻、マザー・モウとのやりとりだ。
最初のコメントを投稿しよう!