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始まりの夏-
「里香、今度旅行でも行かないかい?」俺は里香に伝えると満面の笑みで喜ぶ彼女はまるで子どものようだった。
あの突然の連絡から二ヶ月が経とうとしていた。初めて里香に会った日俺は連絡先の交換を一度は提案したが、里香が既婚者だと知り遠慮したのだ。その後里香は他の知人を通じて俺の連絡先を知ったと言うが、そこまで想われてたのかと嬉しくなった。
里香曰く、あの日以来ずっと気になっていたらしい。今は独身に戻った里香と週に一、二度会って食事をしたり、時間が合えばデートを重ねている。
俺は初めて心から好きだと思える相手だったし、この人とずっと過ごしていきたいと漠然と感じていた。「里香……俺が見る世界をキミにも見せたいよ」そんな感情を抱きながらはしゃぐ里香を後ろから眺めていると、
「カズくん早くー」里香が呼ぶ…その声に現実へと戻された俺は小走りで里香の元へ向かった。
夏本番とは言い難い気候だが、海風があたるこのホテルは中々の心地よさだった。
明日は何処へ行こう…?その話題で盛り上がっていると不意とも、さりげなくとも里香が言った…「私ね…ずっとカズくんといたいよ」そう言うと少し哀しそうな切なそうな瞳をこちらに向ける里香の顔があった。
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夏の想い出は二人にとって大切なものになり、秋の気配が見えてくる頃だった。
9月下旬…「来週か里香が来るのは」俺は携帯のカレンダーを見ながら予定の確認をした。
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