空っぽだけど、満ちる夜

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「さみしい。山田さん、元気でね」 「うん。中島くんも。大変だけど、がんばってね」 「ありがと。またね」  ばいばい。  ……でも。 「……やっぱり、何か買ってこようかな」  と、言ってみた。  もう少し、一緒にいたかったから。  中島くん、どう思うかな。  うざいかな。  一人で食べてたいかな。  分からないけど、中島くんは少し目を開いて、笑った。 「あ、そう? 特大ラーメン?」 「ち、違うよ。何か、飲み物。……いいかな?」 「いいよ、いいよ。どうぞ」  飲み物を買って戻ってくると、 「山田さんいなくなるのかぁ。さみしー」  と、中島くんがまた言った。  だから私も言ってみた。 「……私も、さみしー」  そしたら中島くんは、 「じゃあ、できるだけ一緒にいよう」  そう言ってくれたのだった。  今宵、満月。  空っぽのお腹に温かい飲み物を満たして、私たちのおしゃべりはいつまでも続いた。 おわり
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