空っぽだけど、満ちる夜

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 会社の人たちと別れて気がゆるんだ瞬間、思い出した。 「ぐぅ」  おなかすいた。  そういえば。  私全然、食べてなかったんだった。 「意外とあんまり食べないんだね」  って、よく言われる。  それって、私のぽっちゃり体型が「意外」なんだよな。って、その度に思う。  うんうん。分かる、分かるよ。ほっぺたもふっくらしてて、ご飯もりもり食べそうだもんね、私。  実際、食べるの大好き。ハンバーガーにポテトフライにコーラ、あとホットアップルパイもつけちゃうくらい好き。  でもね。私、食べられないんだ。人前では、あんまり。もしかしたらこれも意外かな?  でもね。この世には、一人で食べたい人だっているんだよ。  会食恐怖症。  そういう「病気」があるんだって、テレビで見て初めて知った。  ナントカ症だなんて、私はそんな、病気っていうほどじゃないとは思う。全然食べられないわけじゃない。  でも、全然食べられる、ってわけでもないのだ。  人と集まる時、私はしばしば混乱する。大勢で集まれば集まるほど、どこを見たらいいのか、何を聞けばいいのか、どのタイミングでどう食べればいいのか、目がぐるぐる回ってくる。  で、結果、 「あれ、山田さん食べないの?」
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