空っぽだけど、満ちる夜

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 限界が来たところで、時間の神様が私に味方したのか、急に会はお開きになった。  開けゴマ。お店の自動ドアが開く。 「じゃあみんな、がんばってね〜」 「また本社にも来てね〜」  外へ出て、息を吹き返す。もらった花束が、夜の中でやっと鮮やかに見えてくる。 「ねぇ、この中で飲み直したい人いる?」  という声が聞こえてきた。  ぎくりとする。  ムリだ。これ以上、無理に決まっている。  影よりも黒くなりをひそめて、私は背を向けて帰ることにした。    町の喧騒が遠ざかり、住宅街に入ると音もない。  ぐぅ。  おなかが鳴った。  あ、そうだ。そういえば。私唐揚げ一口しか食べてなかった。  おなか、すいたなぁ。  何だか、ひどくみじめだ。自分が空っぽになってしまったよう。一人ぼっちでおなかを空かせている私は、まるで空っぽのうつわみたいだ。何だか胸がすうすうする。  おいしい  楽しい  って素直に思えたら、違ったのかな。もっと幸せな感情で、心も体も満たすことができたのかな。  なんか虚しい。  こんな私には、ひっそりと姿を隠した新月が、よく似合う……。  でも残念。今宵は満月なのだった。
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