空っぽだけど、満ちる夜

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 ふと思い立って、いつものコンビニに通う。はじめての社宅生活を支えてくれた、かけがえのない私の味方だ。あともう少し、よろしくね。  開けゴマ。ドアが開いた。 「……あれっ」 「……あれっ」  同時に声が出る。 「中島くん?」 「あ。お疲れ様」  おかしい。何でここにいるの?  中島くんの手元には、おにぎりと大きなレジ袋があった。中のメロンパンとかポテトチップスが透けて見える。 「あれ、さっき、みんなと飲み直すって……」 「あー、うん。ちょっと疲れちゃって」  おにぎりを食べてしまって、コーヒーをぐびっと飲み干す。おにぎりとコーヒーって、合うんだろうか。 「おにぎりとコーヒーって、合うの?」 「知らないけど、おれは好き」 「ふうん」  おにぎりにコーヒーが割と好きな、中島くん。 「おれ、あんまり酒飲めないんだよね」 「え、そうなの? 意外」 「意外って。山田さん失礼だよ。おれってどういうイメージなの」 「……あ、ごめん。でもさ中島くんだって、私を、大食いみたいに」 「え? そんなこと言った?」 「言ったよ」 「言ってないよ」 「言った……と思うよ」 「言ってない言ってない」 「え、そうかなあ……」  中島くんはふふん、と鼻で笑ってコーヒーを一口飲んだ。
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