空っぽだけど、満ちる夜

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 カップラーメンは、文字通りその「大きな器」で私を迎え入れていた。  定番のしょうゆ味。プラ包装を外してふたを開け、お湯を注ぐ。  ここで食べて帰っちゃおうと思った。高校時代は、塾の隣のコンビニで、よくこうして食べていたのだ。  こうやって、一人で食べるほうが楽。何から食べても、どうやって食べても平気だから。  別に、私食べれるよ。  人前でも。  人前っていうか、コンビニだけど。  大勢の人と食べるのが、苦手なだけ。  人より少し苦手なだけ……。    はた。    急にラーメンを運ぶ足が止まった。  割と広めのイートインスペース、そのはしっこの方に、見覚えのある顔があった。  中島くんだ。  同じ新入社員。さっきまで、一緒だった。  中島くんも、私に気づいたらしい。 「あ、お疲れ様です」 「お、お疲れ様です」  どうしようか。  いったん足が乱れた。でも私たち、まだ全然仲良くないし、部署も私は事務で中島くんは総務なのでおそらく今後も接点がなさそうだ。という計算がとっさに働いて、距離を縮めない選択を取ることにした。少し離れた席に座る。カウンター席の、二つ隣。
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