空っぽだけど、満ちる夜

　今はこの特大カップラーメンを食べることに、全集中あるのみである。お湯入れちゃったし、もう逃げられん。約三分後、いざ、参らん。
　ふたを開けると、むあっとカップラーメン独特の香りが鼻を襲う。そしてカップには、やわらかく戻った麺がみっちりとひしめき合っている。そのうえにはエビやたまごなどの「おかず」がこれまたこんもりと乗っている。このたまごのふわふわが、大好きなんだよね。だから空腹のスパイスが最大限に効いた最初の一口は、たまごのふわふわに決めているのだ。
　はぁ、おいしそう。
「いただきます」
　小さく手を合わせて、たまごのふわふわを箸でつまんだ。
　はむっ。
　少し舌でつぶしただけで、たまごはふわん、と夢のようにいなくなってしまう。なので、次々とつまんでは、口の中に放り込む。
　……のだ、いつもの私なら。
　でもその後が続かない。隣の隣にいる人が、気になりすぎる。
　どこまで自由に食べていいものだろう。大好物を先に食べる人って、ちょっと子供っぽいかな？　先に「おかず」ばっかり食べて後で麺ばっかり食べる女、アレかな？　麺はすすってもオーケー？　スープは最後まで飲んでオーケー？