空っぽだけど、満ちる夜

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 どういう食べ方が正解?  分からない。  こっそりと、中島くんを盗み見た。  中島くんは、窓の外をぼんやり見ていた。  手に何か持っている。おにぎりかな? ひじをつき、盃を傾けるようにして。  盃、だなんて、まるでお侍さんのようだ。  と、窓の外に気がつくと、まあるい月がものすごく明るい光を放っていた。月のまわりがオーロラ色に光っている。  今宵、満月。  月光は降りそそぐ。犬にも。猫にも。コンビニにも。コンビニの中で、特大ラーメンを食べる女にも。    ガタンッ    その時急に中島くんが立ち上がった。 「……うっ」  にこにことほほえみながら、こっちに近づいてくる。酔っているのか、ゆるんだ頬が少し赤い。  何。何。  身動きが取れないまま、ただただ中島くんを見つめていると、中島くん、私の手元のラーメンを見て、ひとこと。 「やっぱ食うんだね」  と言った。 「あ、全然食べてなかったから、さっき」  とも、言い直したけど。  でも、少し失礼ですよね。  黙っていると、ぽん、とテーブルに中島くん、未開封のおにぎりを一つ置いた。 「あげる。おやすみ」 「あっ、えと、待って、いいの?」 「いっぱい食べて」
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