空っぽだけど、満ちる夜

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 にやっ、と笑って、中島くんは自動ドアを開けて出て行った。  待ってください。  あの。  結構失礼な人ですよね。  次の週。 「あの、すみませんちょっといいですか」 「はいはい?」  心なしか、フロアの蛍光灯がいつもより明るい。  週末の飲み会のおかげか、何となく空気がやわらかくなったようだ。先輩たちとしゃべりやすくなった気がする。私はすごく緊張していてあんなのでよかったのかすごく不安だったけど、周りの人はあまり気になってないみたいだった。よかった。  気がかりは、中島くんだ。  中島くんは、たまに見かける。総務は色々な仕事があるから、中島くんはいつも忙しそうに、スタスタと歩いているイメージだ。  そのせいか、私と中島くんにはあんまり接点というほどの接点もなかった。あるとすれば、私が中島くんを「失礼な人だ」と思っているくらいのものだった。  中島くんはどう思っているのだろう。多分あの特大ラーメンのせいで、「猫かぶりの大食い」だと思っているのではないだろうか。  昼休憩になって、中島くんの手元におにぎりを一つ、「はいどうぞ」って言って置いた。 「……?」 「こないだの、お返し。ありがとうございました」 「……ああ」  中島くんはふ、と笑って、
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