空っぽだけど、満ちる夜

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 私が言えることは、中島くんは夜のコンビニが好きだろうということだけだ。結構な頻度でイートインスペースにいて、コーヒーを飲んでいる。  声をかける前の中島くんは、いつもソフトが挿入されていないゲーム機のよう。頬杖をついて、じっくりとコーヒーカップを傾けている。  その時分にはいつも夜空に月がかかっていて、上弦の月も下弦の月も、等しく中島くんを見守っているのだった。 「中島くん」  私はたまに、中島くんに声をかける。 「あ、お疲れ様」 「お疲れ様です」 「今、帰り?」 「請求書が、なかなか終わらなくて」 「そっか大変だね」  ガチャン、と音がしそうなくらい、中島くんは切り替えが早い。振り向いた時には、すでに笑顔の中島くんになっていた。 「まあ、ラーメンでも食ってけば。特大のやつ」 「もうっ、やめてよそれは。もういい加減忘れてください」 「そっかぁ。じゃあ、また」 「また」  かわす会話といえばその程度だ。「お疲れ様」って、先にサヨナラするのはいつも、中島くんのほう。私って、きっと退屈なんだろう。  だけど、中島くんには退屈でも、私にとっては一番フレンドリーな会話をしたつもり、だったりする。中島くん気づいてるかな? 少し無理してふざけてること、気づいてませんように。
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