1/2
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ

“○○が消せる薬が密かに再ブーム! これであなたの○○もキレイサッパリ!?”  意味もなくネットを巡回していたら、よくある謳い文句に目を引かれた。タイトルのみならば、普段通り流していただろう。  私が指を止めたのは、チラリと除く一文に“記憶”の文字を見たからだ。  案の定、タップすると想像通りの記事が現れた。記憶を消せる薬がある。それも、特定の相手一人だけをピンポイントで。  忘れたい相手を思って飲むだけで、きれいさっぱりおさらばできるそうだ。  くっ付いているリンクを押すと、通販サイトに飛ばされた。高値ではあるが堂々と存在を露わにしており、逆に不審になる。  けれど、不審視とは裏腹に、今の私には魅力的にも映った。  なぜなら現在、職場苛めにより心を病み、自宅療養中だからだ。もう三年も、手付かずの日々を送っている。  元々、心が弱いとの自覚はあった。すぐに傷つくし、その癖ついた傷は中々直ってくれないし。  今だって、一向に癒えないトラウマに嫌気がさしている。悪夢やフラッシュバックに、何度追いたてられただろう。  薬で改善した姿を描いた。きっと晴れ晴れするに違いない。確信しつつも、一つだけ懸念があった。 “薬は効果が強い分、副作用が大きい。回数を重ねるごとに強くなる傾向にもある”  実は、私は過去に一度、薬を服用している――らしい。これは、旦那である都月に聞いた。  記憶を抹消する薬だ。副作用の強さは計り知れない。しかし、それでも欲望は引っ込まなかった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!