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「…………」
長い沈黙が、鉛のように重い時間が、2人の間を流れていく。
どのくらい経っただろうか。先に口を開いたのは私の方だった。
「それが……私が渡會未来を、記憶から消した理由……」
「まぁ、そうなると思う……」
「そう……ありがとう。話してくれて」
「いや……ごめん。こんな重い話」
「ううん、なんか現実感がないっていうか、知らない人の物語を聞いてるみたいで……まだ整理がつかないや」
「そりゃあそうだよね……」
「……じゃあ、戻ろっか、2人も心配してるだろうし」
「……大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫。せっかくみんなに会えたんだもん」
「そっか……何かあったらあたしたちに相談くらいしてよね」
「わかってる。ありがと」
ぽつりぽつりとそんな話をしながら、私たちは同窓会の会場へと戻る。
渡會未来のいない会場へ。
消すことのできない過去を背負って。
……自動ドアを潜りフロントに入ってきた薄ら笑いの女には、この時はまだ気づかずに。
[完]
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