1章

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【池袋】 【池袋】  アーテルは供養をした後__パチパチと燃えていく草刈鎌は、刃こそ燃えはしなかったが手持ちはよく燃えた__考え事をしながら眠ることにした。あの付喪神はなぜかわからないが自分について何かを知っているようだった。自分は運がいいだけではなく、生かされているのだろうか?なんてアーテルには見合わない難しい話を考えてしまっていたからか、はたまた戦った疲れからか、いつもの__ガラスが所々残っていてちくちくはするが__固く冷たい床でもぐっすりと眠ってしまったのだった。  ぱっちりと体感で目覚めた朝__正確には早朝で会ったのだが__パキパキと関節の音を鳴らしながら身体を起こす。顔を洗って歯を磨きたいのだが、昨日ぼこぼこに壊れてしまった拠点には__廃墟のようにも見えるが、他の所と変わらない__まだ水は通っているだろうか?昨日吹き飛ばされたことで水道管がボロボロになっていないかが不安なのである。自身が吹き飛ばされただけとは言え、店内は悲惨なものであった。移動するならばそのままでよかったのだが、まだ池袋付近を隅々まで探してみることにしたので簡単に掃除した。その時にガラスが割れているだけだと思っていたのだが、いくつかの机や椅子が壊れていたり、カウンターがへこんでしまっていた。正直掃除が面倒なだけで壊れていたりすることは構わないのだが、水が止まっていないかが不安であった。都会の付近にはきれいな川があまりない。アーテルの友人が住んでいた東京の方でも田舎の方__調布の近くだったと思うのだが名前が思い出せない__所にはきれいな水が流れていた、飲み水としても飲めるくらいきれいな水が流れてると聞いたのだが、場所が思い出せなくて移動する気が起きない。調布付近だったのは確かなので池袋からそう遠くはない、とは思うのだが……どこだったかなあ。なんて考えつつ、今日はどこを回ってみようかと考える。よく両親と買い物に行っていた業務スーパーがある板橋の方か、あまり道中に思い出の無い新宿の方か、友人とよく一緒に行ったサンシャインシティの方面か……アーテルは適度に考えた結果、端から回っていくことにした。その為先に業務スーパー、小さい郵便局などがある方へと向かうことにした。あの近くは池袋から少し離れただけなのに、もうすぐに都会離れをした見た目をしているから好きだ。道は狭いけれども。池袋駅から行くと結構遠い、正直板橋駅から向かった方が近い気がする__と言っても、ものすごく近いというわけではないけれど。業務スーパーの方面に向かうまでに高いビルとかもあるから其処らへんも確認しながら向かいたいところである。  池袋は小さくて上に高い建物が多い、リュックを持って店の棚を見てると後ろの人と高確率でぶつかる。今はぶつかる人からいないけれど。棚の死ペースが小さいせいでもあるけど。  しかし……骨が折れる作業だと、行動する前から心が折れそうになる。でも時間は沢山あるのだ、ゆっくり確認していこう。  まず、業務スーパーまでざっくりと歩いてみてそこから虱潰しに店を見ていく。次の日にどこの店、建物を見終わったかわかりやすいように工事中の現場で見つけたペンキで入ったところに後をつけてゆく。そんなに大量にあるわけではない……いや、ホームセンターに行けばあるだろうけど。面倒なので自分が分かればいいくらいのペンキを適当に塗りつけておく。黄色いから目立って分かりやすい。適当に塗ったとて誰かが文句を言ってくるわけでもないのだし……  付喪神と友達になれたら会話相手ができて楽しいのだろうが、敵意を持たない付喪神たちでさえも「他の付喪神に目を付けられたくないから」という理由で自分と一緒に旅をしてくれなかった。普通の事ではあるし、自分がその立場だったらそう行動してる気もするから何も文句は言えないし、無理強いもできなかった。  池袋という都心はあれだろうか、人が平日休日問わずに存在するから真っ先に狙われてしまっていたりするだろうか……なんてふと考える。そう考えたらここを仮拠点にしたのは間違いだったかもしれない。なんて考えつつ、いやいや!何か知っていそうな付喪神が現れたのだから無駄ではない!とポジティブに考える。一人でいると少しナイーブになってしまうようだ、自分から希望した旅ではなく、強制的に駆り出されてしまったからだろうか……しかし、これを楽しめるのもおれの魅力の一つだ!……と自身を元気づける。実際楽しめているか、楽しめていないかで言えば楽しい。道端に転がっている肉塊も見慣れれば日常の一つだし、学校に行かなくてよくなったと考えると嬉しい。  ペンキで見たところを塗っていくにつれて昨日スコードに刺された傷がずきずきと痛む。最低限の傷薬は飲んだのだが、戦闘用に生み出されたわけではない薬は効果が薄いのかまだ飲んでから数時間しか経っていないはずなのだが、腕が悲鳴を上げ始めていた。  いくらアーテルが若いからと言って一日眠って深い傷がある程度治ると考えたら大間違いである。……と、過去の自分に教えてあげたい。傷薬はどんなものが聞くのか分からなかった為、適当にしか吟味しなかったのだ。帰りに近くのドラッグストアを見て帰ってみよう、市販の鎮痛剤でもないよりはマシだろう。信号は役に立っていないので、さくさくと進んでいくと気づいていなかったことに気が付く。へー、何があったか忘れてしまったけど、ここに有名なダイエットジム__その名称が正しいのか分からないが__が展開してるちょっとだけ運動できる!という売り文句のジムが出来ようとしていたらしい。この売り文句を聞き始めたのはいつ頃だったか忘れてしまったけどそんなに前の事だったとは……いろんな駅で何度か見たことがあるので結構繁盛しているようだ。アーテルは運動が好きな方ではあったが筋トレ、と言われたら微妙だった。鬼ごっことやかけっこなどの身体を動かす事は好きなのだが、重たいダンベルを持ち上げたりひたすらに同じところを走り続けるランニングマシンは苦手である。まあ今ジムに行く予定は無いから覗くだけにとどめておこうか。とふらりと移動する、小さなコンビニや美容院も見たけどあまり収穫は無かった。ラッキーなのはスタッフルームに入ると従業員がおやつに食べていたであろうお菓子が少し転がっていたことである。食べ物が一切無かったので、大きな収穫であるだろうか。  銀行の道に戻って来た、交番の横を通って大きい家電量販店の道、駅の方面へと向かう。少し俗な店が多い気もするが居酒屋も多い。そのような店がまとまるスペースなのだろう、と思っているが真偽は知らない。あの狭い道でさえ見るのに時間が掛かってしまってとっくに夕方になり、明かりがチカチカと街に灯り始めていた。最近気が付いたのだが電気が通ってるところと、通っていないところがある。電気を通している場所が問題なのだろうか?はたまた契約会社?そういうことに疎いアーテルのは細かいことは分からないのだが、ま、そんなところだろうと納得しておく。  ちなみに、池袋は知っているだけでパルコ、ブックオフ下のゲームセンター、各所のコンビニ、街の街頭が明かりが灯る。サンシャインシティ(アルパとか)内と駅はランダムでついたり点かなかったりする。電源が行ったり来たりとか、貯蔵してる電気を時々しか使っていない感じなのかも。  ともかく明かりがあるのは安心できる、しかし夕方になってしまっているのは頂けない。携帯__正確にはスマホなのだが__を充電して懐中電灯代わりにしているのだが、片手が埋まりつつ探索をするのは好きじゃない。でも夜行動しないのは勿体ないので、とりあえず電気が通っている所を探索しようか。とりあえずここから近くて程よく狭いところ……決めた!ブックオフ下のゲームセンターにする。地下もあったがどちらも狭かった記憶があるのだ。機械をいっぱいに置いて会ったからかもしれないけれども。  道路側の方は街灯が点いてくれて見渡しやすかったので、軽く見ながらゲームセンターへ向かう。脇道のようなところは明るくないのでまた明るい時にでも見に来よう。  でも自分がここに来た時から変わった感じはしない、少し寝転がってる骨と腐肉が増えたくらいか?と、自分以外の存在がいるような雰囲気や変化は感じられなかった。  タピオカ屋の隣の、開きっぱなしになっている入り口から入って、店内を見て回る。ショーウィンドウには美少女系のコンテンツの物が並べられている。名前は知らないけど可愛いと思うし、人気があるのもなんとなくわかる。広くなった店内をぐるっと回ると、また嬉しいことにまたお菓子を見つけた。ゲームセンターあるあるの大きい袋に入ってはいるが量は少ない、って感じだけどグミなのか重たい。何味なのだろう?と思って確かめてみたら……タコヤキ味。変な味みたいだから、持って行かなかったのかもしれない。し、美味しくないからここに捨てていったのかも。アーテルに対しては大事な食糧なので持っていくつもりであるが。……しょっぱい系のグミ、聞いたことが無いけどこれを開発した企業は大興奮であっただろうな、と開発出来て大変喜んでいる白衣の男女を想像する。よりによってなんでタコヤキ味なのか気になるとこだが。  上の方にはこのレアな味のグミのみしか見つからなかった。減りすぎて空かない、という状態ではあるのだがこれに慣れすぎると危ない。小袋になっているようなのでぴりり、と袋の端を破いてグミをまじまじと見てみる。まんまるくて上にマヨネーズっぽい形をかたどった山形がある。少しオレンジと茶色を混ぜたような色をしたグミだ。……所々アオサのようなものも混じっているように見える。匂いを嗅ぐと少しソースっぽい匂いがする。まじか、と少しワクワクしながら口に放り込んだ。ぐにぐにしながらもサクサクする食感はグミの感じがするのだが、ほのかに香るソースにマヨネーズ、あおさの味もする。しかも少し甘い、でもソースの甘さなのでは?と思えば結構おいしい、とも思う。なによりこの触感が面白いので拾えてラッキーだった。  もにもにと口を動かしながら地下への階段をつかつかと降りつつ、下の階には何があったかを思い出してみる。上の階はお菓子とかぬいぐるみのUFOキャッチャーが主だが、下の階は確か……アーケードゲームやフィギュアなどだったような感じがする。軽く見た記憶しかないのだが、音ゲーとかあったっけ?アーテルはあまりオタクコンテンツというものに関わってこなかったタイプ……というわけではないのだが(好きなジャンルは大体少年漫画系だったので、音ゲーや缶バッジなどよりもフィギュア、ぬいぐるみ系派だった)ここは家から少し距離があるし、周りに大きなゲームセンターもできたことだし。重たいフィギュアや大きいぬいぐるみは見かけなかった時くらいしか覗きに来なかったのだ。 「んー、おれここのゲーセンあまり詳しくねえんだよなあ……」  友人もそういうタイプで、なんなら音ゲーやアーケードゲームに対して「金の無駄だと思う」なんて言っていた。……正直UFOキャッチャーも変わらない気がするので「UFOキャッチャーも同じだろ!」と言ったら恥ずかしいのか気まずさからか、苦し紛れにぼこぼこに殴られた。反撃したけど。  思いのほか長かった階段を降りていくと、無事暗めの地下に到着した。狭そうに見えるけど、暗い、でもちゃんと明かりは点いたままだった。  UFOキャッチャーの後ろは白くなっており、見渡しが悪いので少し警戒しながら向かう。こういう時透明だったら……と思ったけど相手からも自分からも丸見えだから戦いにくさそうだ。  UFOキャッチャーの所には特に何もなく、次はアーケードゲームの方へと向かうことにした。夏場に扇風機が動いていて椅子もあったので友人と飲み物を飲んでのんびりとした記憶がある。しかし、アーケードゲームだから壁があって不安だ。恐る恐るのぞきつつ移動する。……と、自身の気持ちに電流が走るほど衝撃的な光景が広がっていた。
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