1章

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【敵拠点?】 アーテルの瞳には『誰かが生活している形跡』が映し出されていた。いや、誰かたちが生活していた。が正しいのかもしれない。明らかに複数人の寝床と、もうここにはいないと分かる荒れ具合である。人間が過ごしていたのか、はたまた付喪神の拠点だったのか。 アーテルは後者が正しいのではないか、と考える。人間の拠点なら血やら骨がちらばっているはず、というふわっとした考えで確証はないのだが。 何か確証に近づけそうな証拠__刑事ドラマの真似事__を見つけたくて引いてある毛布を捲ったり置いてある箱の中身を覗いてみることにした。箱にはごちゃごちゃとゴミが入っているっぽい、がひっくり返して細部まで見てみる。人が滞在していた所だとしても、もし移動したという証拠を手に入れ、そこに向かえば人に会えるのかもしれない。 真新しい紙ばかりだが中にはメモのようなものもいくつか含まれていた。ま、大半は料理メモとか冗談のメモとか……びりびりなメモのようなものも有るので、多分大切なのは破く。という事を徹底していたようだ。とんでもなく細かいんで繋ぎ合わせるような細かい作業をしなければいけなさそうだ。そんなこと、アーテルはとんでもなく嫌がるので諦めて別の手がかりを探す。くまなく探していると別の隅に隠れているゴミ箱を見つけて、中にはくしゃくしゃの紙が入っていた。またさかさまにして、くしゃくしゃの紙を広げたりしてほかの情報を見てみる。と「移動するらしい」と記載してあるメモがあった。ほかのくしゃくしゃに丸めてある紙は箇条書きになっていたりほかの誰かの文字で「↓忘れんなよ!」って書いてあったり「↷これは俺が覚えるから書かなくて良いよ!」なんて書かれていたりする。忘れっぽくて紙にメモをして過ごしているタイプのようだ。……そして、びりびりに紙をちぎるのをめんどくさがるタイプのようだ。多分怒られるから端っこに隠すようにゴミ箱が置いてあったのだろう、アーテルにしたらありがたい。全部広げて並べてみた。情報を整理するのが苦手であるが国語のテストは最低30点はとれてる、なんとかなるだろう。 _並べた内容を適当に書き纏めてみる。と、勘違いでなければ嬉しい事実が書いてあった。 「明日の夕方移動、スコードは、別……?スコードって昨日戦った奴だよな、うーん?スコードと別行動してる奴がいるのは分かるけどどこ行ったんだろう……」 場所の記載はないようにも見える……というかなんか米マーク?ピザの耳をかじった形?の対称な図が描いてあってなにか描こうとしたインクの後があるが「↓まいごになったらここさがす」って子供のような字と「←あたしと一緒に行くんだからいらねえよ!」って書いてある。察するにこの『あたし』さんに描こうとして止められた感じらしい。止めないで欲しかった……!アーテルは密かに『あたし』さんに対して小さな恨みを抱きつつ考えてみる、多分印象的な建物とかマークだと思うのだが……うーん、こんなマークあまり見た記憶が無いのだけれど、愛知に引っ越した友人の元に行ったとき、こんなマークのショッピングモールに行ったことはあるがあれはこの世界に一つしか無かったりするだろうか?行ってみようかとも考えたが流石にどこにあるか記憶もないし、東京から愛知県に行くのは骨が折れるだろう。違う気もするし……頭をひねって五分、外の空気を吸いに地下から上がって地上に出る。もうすっかり夜になってしまったようで夜風が涼しい。新鮮な空気を吸って頭がすっきりとした。今一度このマークを見てみる、アーテルはうーん、うーんと口から言葉と空気を出すことで酸素の巡りをよくしようとしているのかもしれない。何か見たことがあるのだが記憶が核心に触れそうで触れないむず痒いところをうろうろとしている。分解してみる?半分にしてみる?全部やっても対照的な絵はよく分からなかった。あ、待ち針かな?とも思う。家庭科の授業で刺さった記憶がある時から物凄く裁縫が嫌いなのだが、待ち針は先を触らなければ痛くないので好きだ。あれ、そういえば……と待ち針をみて考えていたことをポツリ、と雨のように思い出してゆく。まだ小雨だが何か、何か…… __待ち針ってカラフルで、飴みたいだよなあ。もっと大きかったら嬉しいのに。 __私には何が嬉しいのかわかんねえなァ、家庭科をしないといけないことは変わんないんだぞ。 __うえェ……嫌すぎる、もーやだなあ。 __何言ってるんだか、アーテルは待ち針で…… ……ここまで思い出したのに、なんでそこから先のことが思い出せないんだろうか。自分が待ち針でやりそうなことと言えばなんだろう?なんだかそれが核心に触れている、と思うのだが…… 「ぐああ、ここまで出かかってんのになァッ……!」 アーテルはもどかしさから手を首元の付近でわたわたと動かす、足も動かして手をうごうごとしている__この表現は正しく思えるくらいうごうごしている__といきなり両手を思いっきり夜空へ伸ばして「あァあ~~~!!」と思い出した衝撃で雄たけびをあげる。 「観覧車だ~!」 __何言ってるんだか、アーテルは待ち針で観覧車作ってるだけでしょ。 __遊園地行ってる妄想してる方が楽しいも~ん、遊園地行きたいなあ。 __お!じゃあ今週の土曜日行かねえか?○○と俺と、アーテルでさ! __さんせーいッ! そんな会話をしたのだった。相手の顔も名前も覚えていないが楽しかった記憶はある。 そして観覧車がある遊園地に行って三人で楽しんだ気がする、そして行ったことのある遊園地を思い出してみる。 ……よみうりランド、東京ドームシティ、ヨコハマクロスワールド___うろ覚えなのでしっかり思い出せない__この場所が、記憶にある。ダメ元でいい、向かってみよう。そう思ったアーテルはひどく屈託のない、嬉しそうな笑顔である。この旅の目標はアーテルの夢を叶える、人間を探すための旅で或るのだが、味方か敵か。分からないところではあるが大切な一歩を歩んでいるのだと自覚することができた事に嬉しさを思い出す。最近小さな嬉しさよりも、大きな悲しさばかり目立っていて気分が沈んでいる所だったが久しぶりに嬉しい気持ちが勝る。心が躍りながら今日はこの地下で寝よう、と思い銀だこ_元、仮拠点になる場所に身体が風なのかもしれない、と勘違いするほどはやく足を進める。もし人があの場所を拠点にしていたらもしかしたら今日帰ってくるかもしれないし、付喪神なら……時がついて足を止める。そうだ、おれ、付喪神の事調べてるんだった。そう考えてまた足と心が重くなる。悲しくなるがどうするか考えてみる……前に地下に移動するのはしよう!もしかしたら観覧車の所へ行く前にどちらが拠点にしているのか分かるかもしれない。
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