偶然の再会

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通りを歩く通行人たちから憐れむような視線を感じながら、何度も弁償を提案しても男性はなかなか受け入れようとしてくれない。 どうしたらいいだろうかと考えながら男性の顔をゆっくり見上げると、サングラスで瞳は見えないものの明らかに外国人に見える。 キリッとした眉に彫の深い通った鼻梁と薄い唇に上がった口角。背丈も百八十は優に超えている。 少し長めの前髪を分けて後ろへ流しているスタイルも清潔感があり、絶対に男前だとサングラスをかけていても分かる。 それに身につけているサングラスも時計もスーツも靴も全てが高級そうで、絶対セレブだ。 きっと外国の俳優かモデルかスポーツ選手か外交官か……それにしてはやけに日本語のうまい人だなと感心していたけれど、ベタついたスーツを見てすぐに現実へ引き戻された。 「あの、必ず弁償しますので私の連絡先だけでもお渡しさせていただけないでしょうか? もちろん慰謝料も払います! もしご不満でしたら警察に……いえ、弁護士?」 混乱しつつ必死に頭を下げると、男性は黙ったまま片眉を上げてじっと私の顔を凝視してきた。
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