流されるまま

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「お菓子は逃げるぞ。よく噛んでゆっくり飲み込まないと、お菓子がビックリして逃げていくんだ」 「あーくん!」 振り返ると黒のフォーマルスーツに、胸にはポケットチーフが覗いた正装姿の朝日くんが立っていた。 「だからゆっくり食べろ」 一夜くんは微妙な顔をしながら頷くと、ぷくぷくほっぺを一生懸命動かしていた。 「朝日くんおかえりなさい。なにか忘れ物?」 「あぁ、ちょっとね」 正装している姿から、これからどこかに出かける予定だと分かる。何か取りに帰ってきたんだと特に気にせずにいた。 すると朝日くんの背後から家政婦の飯田さんが近づいてきた。 「一夜坊ちゃん、おやつが終わったら飯田のバァバとあちらでお遊びしましょうか」 一夜くんの背後に周りおしぼりで手を拭きながら話しかけている。 「あっ、私が面倒見ますので飯田さんはゆっくりしてください」 大丈夫ですよ、というようにクシャッとした笑顔をこちらに向けて頷く飯田さん。 「これから朝日坊ちゃんとお出かけされるとお聞きしました。いってらっしゃいませ」 「――えっ」 どういうこと!?
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