62人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は青春のさなか
答えを出し切れないまま、改めて美梅ちゃんと(対峙するように)話し合う時間がやってきた。
俺は素直に謝罪する。
考えてきたすべてを話し、その上で、
「未熟者であるがゆえに必殺技の名前が決められなかった。これでは君を守れない」
と告げた。
すると美梅ちゃんは可笑しそうに肩を揺らす。
「そんなこと考えてたの? 十川くんてバカなの? いえ、ごめんなさい。聞くまでもなくバカよね」
くっ、情けない。俺はなんて不甲斐ないのか。
恋する姫君に罵られる騎士の気持ちは言葉にならない。こういうときに何と答えたらいいか、今まで習った先生たちは教えてくれなかったぞ。
だが、麗しの姫君はこんな無様な俺を見捨てやしなかった。
「それじゃ、一緒に考えましょ。私を守ってくれる必殺技だもんね。この一週間、私は十川くんの物語のヒロインだったわけだ。それだけですごく嬉しいよ」
と言って、
「では、契約成立の証として、告白してもらいましょうか。そういう約束だったよね。さあ、私に愛の言葉を囁きなさい」
高潔にして純潔な姫君らしく、あどけなくも美しい笑みを浮かべた。
俺は今、青春のさなかにある。
待っててね、美梅ちゃん。
必ず必殺技の名前を決めるからね!
おわり
最初のコメントを投稿しよう!