2 変わり者一家

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2 変わり者一家

 この王国の貴族の子息子女は王都にある貴族学園を卒業する義務があるのだが、貧乏なミュラー家も当然この制度に従わなければならない。  アルフレッドは規定年齢である12歳での入学後、王都の食堂で皿洗いの賄い付きバイトや冒険者ギルドで稼ぎつつ少ない仕送りを遣り繰りして――寮費は高くつくので―― 母方の祖父母の家から極力真面目に学園に通って卒業。  存外賢かった幼少期から老齢の家令がつきっきりで彼に勉強を教えたのだが、元々家令は王都の人材派遣ギルドの中でも一、二を争う優秀な人物だったらしく彼のお陰でアルフレッドは学園でも抜きん出た成績で上位を維持できた。  そのお陰で卒業後は王城にスカウトされ文官となりせっせと実家に仕送りを続ける事となった。  以降は末の双子の妹達が学園を卒業するまではひたすら仕送りの日々が続いたアルフレッドだったが、ようやく全員の就職先が確定した昨年、職を辞して故郷に舞い戻ってきて領地の経営に着手し始めたのがつい最近の出来事だ。  さて。  彼より5歳以上歳下の妹達は残念ながら家令のギックリ腰が原因で学問に関する英才教育が行き届かず教育担当者が脳筋の父親になってしまい――子守とも言う――いつの間にやら木の棒を使った剣技に偏ってしまった。  木の棒を振り回し野山で過ごすついでに放牧された山羊を追いかける手伝いで小遣い稼ぎをする事をしっかり覚えた妹達。  屈強な山岳酪農家達と山羊に揉まれて凛々しく成長してしまい全員淑女科ではなく無事(?)騎士科へ入学。  しかも入学後すぐに身体能力の良さを買われて全員が特待生――寮費と学費の免除――になった。  父親の英才教育の賜物(たまもの)である・・・天晴(アッパレ)。  ・・・。
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