3 王命という名の襲撃

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3 王命という名の襲撃

   さて学園卒業後。  四姉妹のうちの長女と次女は王国騎士団に入隊し、麗しい容姿と剣技を評価され女性近衛として抜擢され、王太子妃と第1王女の専属騎士として常に近くで(かしず)く事となった。  近衛の仕事は休みこそ少ないが結構な高給取りなので、彼女達の仕送りのお陰で伯爵家の財政はアルフレッドの思惑――国に爵位を返上し平民になる計画―― を他所に上向きになっていく。  そして次女が卒業した年から2年後。  双子姉妹も筆頭侯爵家の夫人と嫡女の護衛騎士として雇われ、此方も家に送金を始めてしまいアルフレッドの困惑を置き去りに更に財政が上向きになる伯爵家。  そりゃあ1馬力より4馬力の方が経済効率は高いので、暮らしは楽になるのは当たり前だ――  爵位を王家に返還するには最低でも7年以上遡っての領地の税収と伯爵家の収入を正確に算出し、将来的な見込み収入を国に報告しなければいけないのだが、現当主である(脳筋)がそんな面倒くさい事をするはずがないのでアルフレッドが帰郷してから資料作りに着手し始めた。  だが領地はともあれ伯爵家の稼ぎが急激に多くなったせいで計画は頓挫した。  しかしながら妹達の稼ぎにいつまでも頼るわけにもいかないだろうと、頭を悩ませていたアルフレッドの元に突然ドッカ王国の王印の押された封書が届けられた―― 『アルフレッド・ミュラー次期伯爵とリリーベル・ヘイワード侯爵令嬢の婚姻を命ずる』  思わず手に持ったその書類をバサバサと取り落としたアルフレッド。  ご愁傷さまである。
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