3 王命という名の襲撃

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 両手から落としてしまった王印を押された書類を、イカンイカンと拾い上げると目の前のソファーに座る目にも鮮やかな赤毛にペリドットの瞳の女性に視線をおずおずと向けるアルフレッド・ミュラー伯爵令息。  「で、この王命を直接持ってきたお嬢さんが、リリーベル嬢ご本人という事で間違いないですか?」    「はい。そうですわ。アルフレッド様」  はにかむように微笑むリリーベル嬢が持ってきた荷物は大きなトランクが1つだけ。  青いギンガムチェックのワンピースドレスは貴族女性というより裕福な商家のお嬢さんに見えた。   そしてその彼女の後ろに立つのは、ロザリー・ミュラー。  アルフレッドの4人の妹のうちの双子の片割れである。  彼女の着ている爽やかな水色の騎士服はヘイワード侯爵家私兵団の制服だ。  「まさか、リリーベルの初恋の君が兄貴だとは思わなかったんで、探すのに1年もかかっちゃったよ。アハハハ!」  ――初恋の君ってなんだそれ?・・・  「陛下からは卒業式で『好きな相手と結婚してイイ』ってリリーベルは約束取り付けてるしさ~諦める様に説得は出来なかったわ。ゴメン!」  「・・・えぇ」  能天気なロザリーの発言に困惑する兄。  ――俺の意思は? どこ・・・?  「アルフレッド様の事は7歳で初めてお会いして以来、ほぼ10日に1度の割合で王城に通って見ておりましたの」  「え?! 7歳? 10日に1度?」  ――知らんがな。  つい挙動不審になるアルフレッドである。
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