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0 ある晴れた日の執務室
『アルフレッド・ミュラー次期伯爵とリリーベル・ヘイワード侯爵令嬢の婚姻を命ずる』
その文字は昨年まで勤めていた王城の文官棟の中でも滅多にお目にかかれないような上質な真っ白な便箋に、正式な書類に使われる装飾文字でデカデカと書かれており、最後は国王の正式な書類であることを示す王印がしっかり押されていた。
――はぁ?
それを差し出してきた少女はニコリと微笑んだあとで、何とも美しい淑女の礼をアルフレッドの目の前で披露した。
執務室の窓から見える青々とした山並みの上に広がる青空と、浮かぶ白い雲が長閑に感じられる午後の出来事である。
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