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総勢十人でやった放課後のサッカーは散々だった。白黒のボールを見ていると、美幸の横顔が頭のすみをくすぐって、思うように試合に集中できない。大弥にはボールを奪われ、晴翔には抜かれた。洋治の絶好のパスも盛大に空振る。
中でも一番の問題は、全く入らないシュートだ。
「だぁ! やっちまった!」
俺の蹴ったボールが、大きくゴールを超えて飛んでいく。
「またかよー」
「腹の調子でも悪いのか」
「ボールよろー」
盛大に頭を抱える俺に、メンバーは言いたい放題だ。
アウトしたボールは、最後にボールに触ったやつが取りに行くのがルールだ。俺は、ゴールの後ろを転がるボールを拾いに走った。本当に、今日は良いところがない。
俺の背中を、岳斗の声が追いかけてきた。
「クウ、休憩しよ」
クウは俺のあだ名だ。名前が空遠だから、クウ。クラスでは今、お互いを名前の最初の字にちなんで短く呼ぶのが、男女関係なく流行っている。
ボールを抱えて、木陰の荷物置き場に戻る。一足先に来ていたみんなは、各々持参の水筒を飲んでいた。
自分のランドセルのそばにボールを置いたところで、俺は自分の水筒がないことに気が付いた。
「やべ、教室に水筒忘れた。ダイ、一口ちょうだい」
「やだよ、クウと間接キスなんて。取りに行けよ」
親友のはずの大弥が、盛大に顔をしかめる。水筒の回し飲みなんて少し前まで普通にやっていたのに、五年生になってからの大弥は妙にケッペキだ。
「間接キスと言えばさぁ」
話に割って入ってきた晴翔が、ニヤリと笑って俺の肩に腕を回す。そのまま、他の奴らに背を向けるようにすると、
「クウ、お前今日の五限、美幸のこと見てただろ。俺の席、一番後ろだから丸分かり」
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