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「ジークフリートは来年社交界デビューです。その前に婚約させましょう。私の推薦する令嬢と会わせますよ」
「母上、ヘルミネの推薦した令嬢はどうなるんですか? もうジークフリートと顔合わせしたんですよ」
「それでは私の推薦する令嬢とも顔合わせしなければ不公平ですね。ジークフリートの気に入った方の令嬢と婚約させれば公平でしょう?」
「まあ、それはそうですが……母上は誰を推薦するのですか?」
「アマーリエ・フォン・オルデンブルク公爵令嬢です」
「オルデンブルク公爵の娘ですか? 確かまだ10歳ぐらいですよね? それよりもヘルミネの推薦するフリーデリケ嬢のほうが2歳差で年も近いですよ」
ドロテアの実家と同じ派閥で王太子妃になれる家柄の令嬢はアマーリエしかいない。それ以外だと子爵令嬢か男爵令嬢、家柄が合っても赤ん坊か幼児、それかもっと年上の未亡人になってしまうのだ。
「4歳差と2歳差なんて大した差はないでしょう? それに貴方だって年の近いソヌス第一王女よりもたった12歳だったヘルミネに盛ったんだから」
「ブッ、ゴホゴホッ……や、止めて下さい、その話はもう……」
フレデリックは、元々婚約者だったソヌス王国第一王女との初顔合わせの時にたった12歳だった妹のヘルミネの方を見初めてしまった。それどころかヘルミネとお色気騒動を起こしてしまい、彼女と結婚せざるを得なくなった。その騒動がヘルミネの策略だったことにフレデリックは今も気付いていない。もっとも第一王女を気に入ってなかったフレデリックもそのチャンスを嬉々として利用した。でも結婚直後からずっとヘルミネに冷たくされている夫婦関係を傍から見ると、フレデリックにとってこの選択がよかったのかどうか甚だ疑問だろう。
古傷をそれ以上抉られたくないフレデリックは母に同意して話を打ち切った。大人になってからの2歳差と4歳差は大した違いはないが、14歳から見た10歳はまだ子供だ。ジークフリートが12歳の少女に好意は持てても、まだ子供のアマーリエを婚約者として気に入るはずはないとフレデリックは甘く見ていた。だからジークフリートがアマーリエを選んだのは想定外であり、旅行先から帰って来た妻の怒りの嵐が過ぎるのをひらすら謝って待つ羽目になってしまったのだった。
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