9人が本棚に入れています
本棚に追加
ヘルミネは、旅行から帰国して息子が義母ドロテアの推したアマーリエを婚約者に選んだと知り、激怒して夫フレデリックの元を訪れた。
「フレデリック!」
「おお、愛しのヘルミネ! 君がいなくて私は気が狂いそうだったよ!」
夫が抱き着いてキスをしてこようとするのをヘルミネはサッと避けた。
「ヘルミネ?! 久しぶりなんだ、キスぐらいさせて」
「それより何か言う事があるんじゃないかしら?」
ヘルミネのとげとげしい言葉を聞いてフレデリックはビクッとした。妻が大激怒するであろう事はいつもの経験から予測できていたが、『仕方ないわね』と言ってくれるかもしれないと一縷の望みを抱いていた。でもその望みは潰えてしまった。
「すまない……ジークフリートがアマーリエ嬢を選んだのは予想外だった」
「何が予想外よ! これでますますジークは貴方の母親の言いなりじゃないの!」
「いや、ジークフリートは母上の言いなりじゃないよ。彼には彼なりの考えがあって……うわっ! 痛い!」
ヘルミネは夫に平手打ちを見舞った。フレデリックは叩かれた頬を押さえつつも、妻に縋るような視線を送った。
最初のコメントを投稿しよう!